- 5.美奈 〜 Yume-Same Style 〜
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ばか。 ばかばかばか。ばかなのは美奈。悪いのは美奈。
あずさお姉ちゃんは悪くない。拓也さんも悪くない。
ただちょっと美奈の思い通りに行かなかっただけなのに、 あずさお姉ちゃんの傷ついた顔、拓也さんの驚いた顔。 二人に、ううん、あそこにいたみんなにいやな思いをさせちゃった。
「美奈…」
うつむいたままでもわかる。 拓也さんはすぐに追いかけてきてくれて、今も心配そうな顔で美奈のそばに立っていてくれる。
「ごめんなさい」
これ以上の言葉はでない。これ以上はきっと泣いてしまうから。
だけど拓也さんがやさしく背中を撫でてくれたとき、 美奈の中で何かが切れてしまった。 涙が止まらなくて、声も止まらなくて、 とても悲しくて、それでも拓也さんが大好きで…。
そうして美奈は拓也さんに抱きついしまって、それからずっと泣いていました。 その間もずっと、美奈の背中や髪を撫でていてくれて、 そして美奈が泣きやんだら、ご褒美のようにキスしてくれました。
ごめんなさい、あずさお姉ちゃん。美奈にはお姉ちゃんより大切な人がいます。 その人は優しくて、美奈のことを可愛いって言ってくれて、 一緒に歩くとき手をつないでくれて、 それからちょっと照れた顔で「美奈のこと、好きだよ」と言ってくれます。 美奈はその人のことが大好きです。
だから家に帰ったら、美奈はお姉ちゃんに謝ります。
ごめんなさい、あずさお姉ちゃん。
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