「Piaキャロットへようこそ!!2」番外ショートストーリー「彼女の季節」
「美奈の季節」

作 : サルベージ 轟

1 冬の街角
2 夏のアルバム
3 ザ・パーティ
4 ブレーク
    ・ポイント
5 美奈  
  Yume-Same Style
6 美奈の季節
* あ・と・が・き
4.ブレーク・ポイント


 楽しいひと時間ほど過ぎるのが早いと言うが、 今日のパーティも例外ではなかった。
 ふと気づくと、 時計はすでに10時を回っていた。
 自宅が近い早苗と、 寮に入っている留美はここから歩いて帰れるが、 電車を使う拓也と日野森姉妹は挨拶をして会場を辞した。 (もっとも皆、玄関まで見送りに出てきたが。)
 「そういえば、日野森、推薦入学だって? どこの学校?」
 玄関で靴を履きながら、拓也はあずさに話しかけた。
 「うん、帰りにゆっくり話してあげるわ。」
 「だめ、拓也さんは美奈と二人で帰るの。 お姉ちゃんは先帰って」
 突然、美奈が二人の間に割って入る。
 「え? み、ミーナ?」
 日野森が美奈の剣幕に驚いて向き直る。 拓也は気まずい雰囲気を察し、とりなすかのように提案した。
 「もう遅いし、一緒に帰ろう。 日野森も一応女の子だし。」
 「誰が一応ですって!?」
 「い、一応というか、どっちかって言うか」
 「そういう台詞を吐くのはこの口ぃ〜?」
 「いててっ」
 ほおをつねられ、 拓也は思わず悲鳴を上げる。
 「それともこっちの声帯かぁ〜?」
 日野森が拓也に詰めより首を締めようとする。
 「お姉ちゃん拓也さんにくっつかないで!」
 突然、美奈が声を上げて日野森を押しやる。
 「え、ミーナ…」
 「やめろよ、どうしたんだ、美奈?」
 「ばかっ!! お姉ちゃんも拓也さんも大嫌いっ!!」
 美奈は乱暴にドアを押し開けると、 そのまま外へ駆け出してしまった。
 「ミーナ!」
 追いかけようとしたあずさを押しとどめると、拓也は店長に向き直る。
 「うん、あずさくんは私が。 君は早く彼女を」
 店長の言葉を最後まで聞かず、拓也は外へと飛び出した
 「ミーナ…」
 残されたあずさは打ちのめされたようにつぶやく。

 拓也が美奈に追いついたのは、キャロットの寮の近くの公園だった。 公園のブランコに美奈は一人座っていた。
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