- 4.ブレーク・ポイント
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楽しいひと時間ほど過ぎるのが早いと言うが、 今日のパーティも例外ではなかった。
ふと気づくと、 時計はすでに10時を回っていた。
自宅が近い早苗と、 寮に入っている留美はここから歩いて帰れるが、 電車を使う拓也と日野森姉妹は挨拶をして会場を辞した。 (もっとも皆、玄関まで見送りに出てきたが。)
「そういえば、日野森、推薦入学だって? どこの学校?」
玄関で靴を履きながら、拓也はあずさに話しかけた。
「うん、帰りにゆっくり話してあげるわ。」
「だめ、拓也さんは美奈と二人で帰るの。 お姉ちゃんは先帰って」
突然、美奈が二人の間に割って入る。
「え? み、ミーナ?」
日野森が美奈の剣幕に驚いて向き直る。 拓也は気まずい雰囲気を察し、とりなすかのように提案した。
「もう遅いし、一緒に帰ろう。 日野森も一応女の子だし。」
「誰が一応ですって!?」
「い、一応というか、どっちかって言うか」
「そういう台詞を吐くのはこの口ぃ〜?」
「いててっ」
ほおをつねられ、 拓也は思わず悲鳴を上げる。
「それともこっちの声帯かぁ〜?」
日野森が拓也に詰めより首を締めようとする。
「お姉ちゃん拓也さんにくっつかないで!」
突然、美奈が声を上げて日野森を押しやる。
「え、ミーナ…」
「やめろよ、どうしたんだ、美奈?」
「ばかっ!! お姉ちゃんも拓也さんも大嫌いっ!!」
美奈は乱暴にドアを押し開けると、 そのまま外へ駆け出してしまった。
「ミーナ!」
追いかけようとしたあずさを押しとどめると、拓也は店長に向き直る。
「うん、あずさくんは私が。 君は早く彼女を」
店長の言葉を最後まで聞かず、拓也は外へと飛び出した
「ミーナ…」
残されたあずさは打ちのめされたようにつぶやく。
拓也が美奈に追いついたのは、キャロットの寮の近くの公園だった。 公園のブランコに美奈は一人座っていた。
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